兵庫県の北部、日本海に面した城崎町と竹野町を結ぶ旧道に鋳物師戻峠という謂れのありそうな峠に向かった。鋳物師とは、遠く奈良時代や平安時代に、銅や鉄を使い仏像や梵鐘を造る技術者たちを言う。仏教が広まると同時に、各地に呼ばれ、シンボルである仏像や、鐘を造り活躍した。
昔、京から当地を通りかかった鋳物師が山中の大岩の下を通ろうとしたところ突然、地震が起こり、ゆらゆらと大岩が揺れていた。怖くて先にいけず、来た道をまた戻っていったという謂れである。推定15~16トンもあるとされる大岩見たさに峠にやって来た。県道9号線をはさんでいったり来たりするが大岩は見当たらない。
地元の人に聞きまわり、竹野町の荊木山両界院と言う寺の参道から登れると分かった。山道は足に堪えるが大岩見たさに心は弾む。しかし行けども大岩は見当たらない。二度も三度も行き来する。まるで鋳物師が不安を抱え行きつ戻りつしたかのようだった。大岩を真下か狙うことはできず、少しはなれた場所からシャッターを切った。