九州を代表する景勝地、火の国の阿蘇は根子岳、高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳の5嶺を併せて言う。なかでも切れたった山容が見事な根子岳や、噴煙を上げ続ける中岳などさまざまな表情を見せる。
阿蘇の周囲は外輪山で、1周約90kmのカルデラ(ポルトガル語で大きな鍋)は、最大級の規模を誇る。その阿蘇の南に、俵山(標高1095m)と呼ぶ山がある。米俵を横にしたような姿から、名付けられたと言われている。ふだんでも展望のよさは知られているが、春先や、秋口など朝霧が現われると見事な風景が広がると聞き、俵山峠を目指した。深夜に峠に着き、展望台までの暗い道を歩いた。ほどなく展望台に着いた。
三脚を広げカメラをセットする。期待しながら夜明けを待ち続けた。まるで、芝居が始まるのを待つ気持ちである。どんな筋書きなのか、どんなドラマが待っているのか、観客は筆者一人である。徐々に薄明るくなるにつれ、ドラマが始まってきた。阿蘇の山容が現われ始めると幻想的な景色が広がり始めた。